ほつまつたえ
鈴と竹
鈴について、なぜ神社の正面に鈴が祀られているかについて私の感じ取ったことを、前回、雑談として話させていただきました。
この鈴のもとおりは、鉄分を含んだ泥が葦の根っこに溜まり、長い年月を経て球状の層が出来、褐鉄鉱と呼ばれています。根っこは涸れて中は空洞になり、中の枯れた根っこが塊となり振ると音がするので鈴石と言われるようになりました。この葦原の湿原にできた鈴石が鈴の原型となったと考えられます。
水酸化鉄「FeO(OH)」でできたこの褐鉄鉱は350~400℃という鉄よりかなり低温で分解・溶融が始まります。鈴が神社の正面に祀られているは、縄文時代に火力が充分に得られなかった時であったから、この鈴石を集め、溶かして生まれてできた鉄は非常に貴重なものであったと考えられ、尊ばれていたと思われます。
次に、今回取り上げた「スズ」には、「鈴」以外に「竹」を示す意味が隠されていたことを知ったからです。
スズ竹と呼ばれる竹の存在を「室井綽著 竹の世界 Part1,2 地人書房」により知りました。
本書で、スズ竹は鈴竹、根曲竹(ネマガリダケ)とも呼ばれていることを知り、この鈴竹の他にも、竹の偽年枝や、竹の開花と寿命について興味ある事柄を知りました。
また、「両神の民俗的世界:埼玉県秩父郡旧両神村小森谷民俗誌」より、ここの方は、笹のことを「すず」鈴と呼んでいることも知りました。
① スズ竹
紀伊半島には、スズ竹の群生地が多く、ズズ竹はミスズとも呼ばれ、ミは尊称である。この筍は春の山菜中、味の王様と呼ばれ、成長した竹稈は各種のザルとして強く美しく、山民の生活と密着しているものはない。
著者は篠懸(すずかけ)というものを調べたとき、それは山伏が修行で大台ケ原や大峰山に登るときに着用していたコートで、雨露を防ぎ、笹葉で手足が傷つくことを防ぐためのもので、両縁と下部に小さい菊綴りがついている。実際に、大台ケ原へ実際にスズダケが群生しており覆いかぶさるなかを登山し、特に葉の長さが40cmもあり、イガスズと特別視されているスズダケは葉巾が広く見事であるとあり、もし、この道中に篠懸というコートを着用していなかったら全身傷だらけになっていただろうと感想を記されている。
なお、信濃の枕詞にある「みすず刈る・・・」は鈴竹の必需品に対する尊称であったからと言われています。
尚、余談ですが灰田勝彦が歌っていた「鈴懸の径」の鈴懸はプラタナスのことです。
② 竹の偽年枝
木には年輪と言うものがあり、伐採して幹を見れば年輪があり、おおよその木の年数が数えられます。竹の場合は、年輪がなく、年齢を数えるのは不可能であると思っていました。
図のように、1年生、2年生、3年生と枝の出方で区別でき、外観で枝の節を数えて年が分かることを知りました。
本書に、偽年枝と年齢の関係で驚くことに、竹は偽年枝(偽年輪)と呼ばれて、気象条件によって、伸長生長を1年に2回繰り返すということがわかりました。
夏、日照りが続き、水不足などにより、枝の先端の葉が枯れてしまっても、秋になり慈雨にあうと、枯れ葉の基部から翌年伸びるはずの小枝の芽を伸ばし、葉を2,3枚つける。
このように、伸長生長を1年に2回繰り返すことを偽年枝という。小枝の先端で明春伸びる予定の芽が、秋に伸びたことがわかる。
初心者がみると、2年生の年齢と誤って判定する。しかし、竹林の持ち主や竹細工を職業とするような人には稈(かん:中空の茎)の色や固さ、株元に竹の皮をつけているなどで年齢を判断できるようです。
以前、高畠先生のお話の中で、古代の人は長寿であったということや暦の解釈で、今の1年は当時の2年分であったかも知れないという疑問にも合致すると考えられます。
③ 竹の開花と寿命
竹は60年経つと(あるいは100年とか他の説もありますが)、花を咲かせて一斉に枯れてしまうことが確認されています。当時は、この竹が開花して枯れる期間を一つの暦の単位にしていたことが考えられます。
枯れた竹を新しく植え替えることを言っているものと思えます。
竹の開花周期について、室井綽著のなかで、「日中ともに60年という俗説があるが、モウソウチクで中国から苗を取り寄せてから234年という記録があり、それまでの中国での年数を加算すると60年の5倍か6倍かわからないがとにかく長い。60年という数字は干支の最小公倍数でとにかく長いことを意味している。」と記載されています。
④ ホツマツタヱ記述より抜粋
④-1 13綾の表題に「スズカ」という言葉があり、その説明の一部に(14ページ)「すずはまさかき」という言葉が出てきます。
こたえとく すゞはまさかき(13-14)
ほすゑのび としにきなかの
むよろほぎ
ワカヒコは答えて再び説き始めました。
「スズ(鈴木)とは古代から植え継がれてきたマサカキ(天真榊)の事で、この木の成長は一年にキナカ(半寸・約1.5cm)ずつ穂が伸び続け、丁度六万年目にサクスズ(折鈴、枯れる)となる神木でこよみ(暦)の元となる聖なる木です。と、高畠先生のホームページ(2003年)で解釈されています。
④-2 「サクスズ」という言葉は、8綾の冒頭(8-2最終行:小笠原)に出てきました。8綾以外にも「サクスズ」という言葉は、27綾、28綾にも出てきます。27-21,28-3,28-53,28-62.(和仁估安聰釋本)
おおんかみ あめがしたてる(8-2)
くしひるに たみもゆたかに
ふそみよろ ふちみをやその
ふたとしを へてもやすらや
みかたちも なをわかやぎて
おわします ことしふそよの
さくすゞを ふそゐのすゝに
うゑかえて ふしにあたれは(8-3)
「さくすず」の「さく」は竹の花が、何十年もたって、初めて咲いて、枯れて落ちることを示していると思われます。
ここで言っている「スズ」を竹のことと理解すれば、納得できると思いました。
以上
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